6.14.2011

東京電力への実質的な公的資金注入に、大義名分はあるのか?

東京電力への実質的な公的資金注入が閣議決定されたそうだ。

具体的には国内の原発を保有する各電力会社からの拠出金と、交付国債なる形での政府からの拠出金をベースに機構をつくり、その機構が東電を支援する形になるという。

僕は、ここに大義名分があるのかを問いたい。
一応の名目は「①被害者への迅速・適切な賠償 ②事故による事業者(東京電力等)の悪影響の回避 ③安定した電力供給の確保」のためとされている。

でも僕は、これには大義名分があるようには感じられない。
国債という形をとるにせよ、政府から拠出される金があるのだ。
それの理由が、説得力のないこれらの名目だとしたら、声をあげるべきだろうと思う。

例えば被害者への迅速適切な賠償。
どこまでが被害者かわからないのに、適切も迅速もあるだろうか?
どれだけ被害額が出るかわからないといっているのに、迅速な賠償が可能だと、本気で思っているならば、まずはその脳みそを洗うところから始めたほうがいいと思うくらいだ。

事故による事業者の悪影響の回避については、そもそも回避する必要があるのか?という視点に立たなければいけない。
少なくとも今回の原発事故がもたらしたものは、悪影響ではなくやってきたことの収穫であると思う。
安全を二の次三の次にしてきた事の収穫だ。
これは東電自身が刈り取るべき収穫分であって、それは悪影響でもなんでもない。
企業としてメッキで誤魔化してきた部分がハゲるだけの話だ。

最後の安定した電力の供給については、(東電自身の働きと節電の呼びかけによって)計画停電もとりやめられ、生活するために必要な電気量は確保できている。
これ以上の安定した状態とはいったい何だろうか?
そして、そのための方策が何も示されていない状態で、果たして公的資金注入まで明記した法案が閣議決定される日本は、いったい何なのだろうかと思う。

さらに気になるのは、この「機構」なるものの存在だ。
原子力の専門家などを中心に集めるそうだが、明らかに天下り先をひとつ増やすだけになるではないか。
逆立ちして考えても、私には機構を新たに設立する理由がよくわからない。

しかもそこには原発を保有する電力各社からの巨額の拠出金と、政府からの資金が集まってくる。
これが天下り先でなくて何と言うのか?東電のドサクサに紛れて、無駄を増やそうと言うのだろうか?
その神経、安直な発想には言葉も出ない。

本当に「公的資金を注入しなければいけないほど」なのであれば、既にその手の活動を手がけている、産業再生機構あたりに、特別法を使って委任するほうが賢いやり方なんじゃないだろうかと思う。
手間も時間も、新たに機構を設立するよりはスムーズだろうし、何より名目としてあげている迅速な対応につなげるためには、現状ある機構を活用するほうが賢いだろう。

公的資金注入をするならば、国民が納得するだけの大義名分が必要だ。
東電はどれだけ説明責任を果たしたか?
未だ安定しない原発について、現状どうなっており、どのように回復させ、廃炉するのかというプロセスを示したか?
他の原発についての取り扱いはどうか?今後どうやって安全を確保した上で運営するのか、説明をして納得してもらえているのか?500年後の子供たちが苦しまないプランを建てられているだろうか?

資金を注入してもらわなければどれほどマズイ状態にあるのか、経営者みずから、国民に対して説明しているだろうか?

少なくとも私の目には、名目を掲げる前のこれらのステップはひとつもクリアできていないように見える。
少なくとも私の耳には、日々小さくなり、今にも消えてしまいそうな、原発についての説明の声しか聞こえてこない。

納得できるだけの理由なしに、間接的とはいえ、政府から東電へ金が渡ろうとしている。
怒りではなく、建設的な気持ちで、声を上げるときは声を上げなければいけないと思う。

参考記事:
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20110614dde007040031000c.html
http://www.corporate-legal.jp/houmu_news253/
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2011&d=0614&f=business_0614_124.shtml

0 件のコメント: