3.19.2009

読書。

風邪を引きました。
治りかけですが、まだ注意が必要そう。

結果として表に出られないので、今日のように天気が良くても読書をするほか無く。

で、読んだのがこちら。



シンプルなタイトル。
最近解決された、クレイ数学研究所の提示したミレニアム懸賞問題のひとつであるポアンカレ予想が、いかにして解決されたか?というのを、ほぼ時系列にならべつつ、小説チックな書き味で解説した書籍です。

一章は序文、プロローグとでも言うべき章で、ごくごく短いページを使ってペレルマン(ポアンカレ予想の最終的な証明をした張本人)が、フィールズ賞(数学界のノーベル賞的な章)を辞退するという衝撃的なストーリーが語られています。

二章ではトポロジ(日本語では位相幾何学)に関する基礎知識が解説されており、トポロジに明るくない私のような人間でも内容を(ある程度)理解できるよう配慮されていました。

三章ではポアンカレ予想にその名を残す、この予想を示した本人、H・ポアンカレについて、その神童とも呼ぶべき幼少時代の逸話からはじまって、学生時代~技師時代について書かれています。四章はその後、ポアンカレが数学者として歩み始めたときに成した偉業である、制限三体問題についての話が紹介されており、興味深かったです。

五章から六章にかけて、トポロジの誕生とポアンカレの晩年にかけての話が語られます。
続く七章で、ようやっと本題であるポアンカレ予想の話が登場しますが、ここまでならば、ちょっとした科学小説か歴史小説のような感覚で読み進められると思いました。

八章ではポアンカレ予想に振り回された人々(ポアンカレ熱という「病気」にかかった人々)の話が展開されますが、このあたりからトポロジによる概念的な話が、数式を用いずに語られるので、頭の中でイメージするのは困難になります。というか、不可能でした。読み終えて思うのは、より楽しむためにはイメージできた方がいいだろうけれども、概要を理解するにはそれほど重要じゃないから気にすることはないという事です。
(解説において数式を用いていないところが、それを体現していると感じました。)

九章から十章にかけては、4次元以上でのポアンカレ予想が証明された話や、コンピュータを使った新たな証明法の話が語られます。エレガントでないと揶揄される、四色問題の証明に関する話もちらっと出てくるので、四色問題の証明のどの辺がエレガントでないと言われるか気になる人は、十章だけ読んでも楽しめると思います。

いよいよ十一章、十二章を使って、ペレルマンによる証明がいかにして行われたかという過程が書かれていくわけですが、二章を読んでからいきなり十一章を読み始めたとしても、ポアンカレ予想がどう証明されたのかという概略を知ることはできます。
従って、一章、二章、十一章、十二章だけ読んでこの本の感想文を書けと言われたとしても、十分事足りると思います。

この、前後関係がよく分からなくても話として理解できるあたりは、よく作られていると感じました。
けれども、ペレルマンの英語の使い方に関するところまで訳してしまっていたりとか、帽子の中からウサギを出すという比喩表現まで、比喩として訳さず、そのまま直訳する訳者の翻訳センスのなさには戸惑いました。
また、漢字に対して無理矢理にカタカナのふりがなを振るという表現も随所で見られましたが、これも好みが分かれるところでしょう。(ちなみに、私は嫌いです。)

十三章は権力争いの話で、もはや本筋から離れてしまっています。ポアンカレ予想を巡る一連の騒動を書き留めるという趣旨には合致していると思いますが、続く十四章も含めて読む必要のない、要らない章だと言えます。

サブタイトルにある「世紀の謎を掛けた数学者、解き明かした数学者」から見れば、十二章までで十分な内容です。
特に十四章はミレニアム懸賞問題としてあげられているポアンカレ予想の証明について、クレイ数学研究所から賞金が出るか出ないかという俗物的な話で、まったくおもしろみが感じられませんでした。
(このあたりは、著者の野次馬的な心理が出てしまっている残念なところだと思います。)

先日NHKだったかで特集番組が組まれていましたが、100年にわたって解決されなかった数学的予想を解決した(テレビ番組などでは変人、超人、天才と描かれている)ロシア人数学者がどのようにしてこの問題に証明を与えたか、その背景を知り、実はペレルマンも数多くいる数学者の一人でしかなかったという事実を知るには十分な書籍だと思います。

逆に、ペレルマンの人となりを知りたいならばオススメできません。
あくまで「ポアンカレ予想」を扱った書籍ですから。

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